ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』を簡単に解説!
今回ご紹介するのは数あるバレエ作品の中でも人気を誇る「ジゼル」という作品です。
ジゼルのあらすじを解説する前に、、、
『ロマンテック・バレエ』について少しお話ししようと思います!
これを知っていると絶対にもう一段階高くジゼルを楽しめます
ロマンテック・バレエとジゼルの関係性
ロマンテックバレエの意味
「ロマンティック・バレエ」は、フランス発祥で、最も歴史のあるバレエです。
”ロマン主義の影響を強く受けたバレエ”という意味で、1830〜40年代にかけてヨーロッパで盛んに上演されたバレエの様式です。
バレリーナが爪先で立って踊る技法も、この時代に普及したんだそうです!
ロマンテックバレエの特徴
- くるぶしぐらいまでの丈の長いスカート(ロマンティックチュチュ)やポワント(つま先立ち)で踊る
- 妖精や魔女、悪魔など幻想的な登場人物が登場する作品が多い
- 軽やかな動作で世界観を表現する。
- 「ジゼル」「ラ‐シルフィード」「白鳥の湖」などの作品がある
ロマンテックバレエの非現実で夢夢しい世界観がとても好きです。
イメージを分かりやすく見るとこんな感じ!
バレエと聞いて想像されるイメージ像がロマンテックバレエの特徴そのものだと思います!
右上の衣装はジゼルでも着用するロマンティックチュチュです!
よーく見ると背中の辺りに羽が生えているのが分かりますか?
妖精を衣装で表現していて可愛いですね
バレエ作品「ジゼル」とは
1841年6月28日、パリ・オペラ座で初演され、
身分の違う男女の悲しい恋物語を題材にした作品です。
この作品は、「結婚式をあげる前に亡くなってしまった花嫁たちが精霊(ウィリ)となって、森に迷い込んだ男性を死ぬまで踊り狂わせる」というオーストリア地方の伝説をもとに作られたようです。
ざっくり作品の特徴
- 全2幕構成で上映時間が短め(バレエ作品では3幕構成が多いです)
- 主人公(ジゼル)が途中から亡霊姿になる(他のバレエ作品では見られない)
- 軽やかな踊りと壮絶な演技が見どころ
バレリーナから見た作品の印象
- ジゼルが可哀想すぎる、アルブレヒトが最低男(後ほどでてきます!)
- 2幕のウィリのコールド場面の練習が過酷(後ほど説明します!)
ジゼルのあらすじ
主要な登場人物
まずは、バレエ『ジゼル』の登場人物をご紹介します!
- ジゼル
心臓が弱いが踊る事が大好きな村娘。青年ロイスの恋人。 - アルブレヒト
貴族の青年。バチルドという婚約者がいるにも関わらず、身分も名前も偽り村娘ジゼルと恋人同士に。 - ヒラリオン
森番の青年・ジゼルの事が好き。 - バチルド
貴族でアルブレヒトの婚約者。 - ベルト
ジゼルの母親。心臓の弱いジゼルを大事に育てている。 - ミルタ
ウィリ(精霊)の女王。 - ウィリ
結婚式をあげる前に亡くなった花嫁たちの精霊。
1幕【村の収穫祭】~楽しさと悲劇の幕~
舞台は中世のドイツのとある村。
心臓が弱いけど踊る事が大好きなジゼルは、母とゆったり暮らしていました。
ジゼルにはアルブレヒトという恋人がおり、結婚を誓うほど2人は愛し合っていました。
(しかし彼の本性は貴族。ジゼルはこの事をまだ知りません泣)
ジゼルに片思いをしていた森番の青年ヒラリオンは2人の恋仲に嫉妬し、
日頃からアルブレヒトの立ち振る舞いに違和感を感じていました。
そして、ジゼルの恋人であるロイスの小屋にこっそりと忍び込み、隠されていた剣と刻まれた紋章を見つけアルブレヒトが貴族である事を確信します。(本当にアルブレヒトが最低です!!ヒラリオンは探偵並です)
そんな事も知らずジゼルとアルブレヒトは、
村の仲間とブドウの収穫を祝って楽しく踊っていました。
そこへ、狩に来ていた貴族がジゼルたちの村に立ち寄ります。
狩にはアルブレヒトの婚約者バチルドも来ており、ジゼルとも出会います。
2人はお互いに婚約者がいることを知り、仲良くなるのでした。
(ここから最悪の展開です)
ヒラリオンが「アルブレヒトという男は貴族で、そこにいる女(バチルダ)は婚約者だ!!」とジゼルや村のみんなの前でバラします。
自身が貴族で婚約者がいる事を隠しきれなくなってしまったアルブレヒトは、ジゼルがいる目の前で、バチルダの手にキスをしたのです。(とんでもない修羅場です)
ジゼルはショックにより気が狂い、剣を振りまわして自らの命を絶とうと試みます。
ヒラリオン達が止めに入り、剣は手放しますが、心臓が弱かったジゼルは母の腕の中で死んでしまいます。
2幕【森の墓場】~死の舞と真実の愛~
舞台は夜の森。
ヒラリオンは死んだジゼルの墓参りにやってきますが、薄気味悪く逃げ出しました。
この森はウィリ達が集まる森です、、、。
ジゼルはウィリの女王ミルタに呼ばれウィリ達に仲間入りします。
ウィリとは
結婚式をあげる前に亡くなった花嫁たちの精霊。
森に迷い込んだ男性を死ぬまで踊り狂わします。
その頃、アルブレヒトもジゼルの墓参りにやって来ます。アルブレヒトは暗闇の中でジゼルの気配を感じ2人は切ない愛の踊りを踊ります。
逃げ隠れていたヒラリオンはウィリ達に見つかり死ぬまで踊り続けさせられ、最後には沼に突き落とされてしまいます。
その後アルブレヒトもウィリ達に見つかってしまいますが、ジゼルが必死に守ろうとします。
踊り狂わされている途中で朝がやってきます。
ウィリ達は夜しか活動できないので墓へと戻っていきアルブレヒトの命は助かりました。
ジゼルもアルブレヒトに別れを告げ、切ないストーリーは幕を閉じます。
ジゼルの作品の見どころ
ときめき「ジゼルの登場」
それは、ジゼルの愛らしくて明るい登場シーン
ジゼル役と言えば白と青の衣装。(たまにベージュっぽい衣装の時もあり)
ドアの中から出てくる姿が見えた時は、「わぁ」と毎回心が踊ります。
冒頭のアルブレヒトを探すジゼル、少し驚かそうとするアルブレヒト。
出会った後の2人の演技が可愛らしすぎて必見です!
(私が好きなのは動画の4:00〜の2人の踊りのシーンです)
ジゼルのバリエーション
心臓の弱いジゼルが踊る喜び・アルブレヒトへの愛を表現するシーン
バリエーションとは
舞台の真ん中で1人で踊る曲のことを言います。
長さとしては約1~2分半ほどですが、たった1分を踊り切るだけでも体力的にきついのがバリエーションの特徴です。
1幕の途中でこのバリエーションは出てきます。
振付の難易度も高い&表現力が特に求められるこの踊りはダンサーにっても見せ場です。
ジゼルのバリエーションの踊り方を比較した動画です!
好みの踊り方のダンサーを是非見つけてみて下さい
演技力がすごい「狂乱の場」
アルブレヒトに婚約者が居ると分かってジゼルが狂っていくシーン。
ここは踊りというより”演技”が光る場面。
約8分も続く演技は、観客をグッと世界に引き込みます、、。
演者によって、狂い方や感情表現の仕方が違います。
(可愛さを残して狂うor少し怖さを出して狂う等)
出演者しか知らないプチ情報
ジゼルが狂っていく冒頭のシーンで、ジゼルは母の元に倒れ込みます。母はジゼルを心配し頭を撫でるなど介抱しています。
実はこの時、母役は重大な任務を課されています、、。
それは『ジゼルのヘアスタイルを変える』です。
さっきまでジゼル役は髪型がシニヨンだったのに、少し乱れ髪orおろし髪になっています。
舞台上でヘアスタイルを変えるのは異例ですので、是非皆さんにも注目していただきたいです!
ウィリの見せ場「一糸乱れぬ群舞」
それは、ウィリたちが切なく踊るある森の夜を描いたシーン。
この世のものとは思えない世界観に引き込まれます。
私も踊った事があるのですが、この群舞はバレエの中でもトップクラスにしんどいです。
精霊として個性を持たないウィリたちは、
立ち位置、脚を上げる角度、顔の向きなど、全ての動きがぴったり揃っていることを求められます。
この動画の6分50秒〜の場面はウィリ達の見せ場で、客席から見ると圧巻です、、、。(拍手が湧き起こることも!)
ここで拍手があった時は、ウィリのみんなで、頑張った練習の辛さや、感動していただけている嬉しさなど色々な気持ちが混ざってウルっとした記憶があります。
愛の踊り~ジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥ~
2人の悲しくて深い愛を表現したシーン
ジゼルとアルブレヒトが愛と悲しみ、魂の繋がりを胸に2人で踊ります。
ジゼルの動作一つ一つがフワッと風のように表現され、精霊そのもの。
アルブレヒトがジゼルとリフトする(持ち上げる)振付は、本当に宙に浮いているかのように体の重さを全く感じさせません。
ここでプチ情報!
硬いトウ・シューズで踊ると「カンッ」と音が鳴ってしまうので、できるだけ音がしないようにトウシューズを柔らかく加工するダンサーもいます。
朝が来るとウィリ達は姿を消すので、
ジゼルはアルブレヒトのためにできるだけゆっくり踊ります。
バレエでは手や足の動かし方1つに意味が込められているのですが、このパ・ド・ドゥは足の出し方や指先の角度など特に細部まで表現がなされていると個人的に思います。
まとめ
今回は「ジゼル」についての解説でしたがいかがでしたでしょうか?
全2幕の中に壮大なストーリーが描かれていますよね。
第1幕と第2幕でジゼルの踊り方がガラッと変わる姿が、この作品の見どころの一つです。
皆様に少しでも興味を持っていただけると嬉しいです
これからもバレエに関する情報をお届けしていきます
おまけ
こちらは、私が数年前にジゼルの2幕のパ・ド・ドゥを踊った際の衣装です。
シンプルな白のロマンティックチュチュを着る機会は意外にも少ないので、テンションが上がりました
こちらは、ジゼル1幕のお衣装です。
青と白を基調としており、村娘なのでストーンなどはついていません。
胸元のお花やエプロンの花刺繍が可愛いですよね!私の一番のお気に入りは胸元の繊細なレースのデザインでした